【保存版】世界記録保持者 エリウド・キプチョゲ選手の練習メニュー
今月9月、ベルリンマラソンで世界記録を打ち立てた、
エウリド・キプチョゲ 選手
タイムは「2時間1分39秒」。 素晴らしい記録です。
キプチョゲ選手の経歴詳細は↓ Wikiで
彼は去年5月、NIKEの「Breaking2」という、フルマラソンをサブ2で走るプロジェクトに参加。
その時、非公式ながら「2時間0分25秒」を叩き出し、サブ2に最も近いランナーとして期待されていました。
その常識を覆す走力を持つ キプチョゲ選手より、自身の練習メニューが公開されました。
(去年ベルリンマラソン前に実施した5週間分)
トップランナーにとって練習メニューは言わば資産。
それを包み隠さず、こと詳細に。
さすが世界記録保持者、素敵すぎます。
↓ が練習メニューの原文(英語)。
///
せっかく公開してくれた練習メニュー。
これは分析せねばもったいない。
ということで早速、まずは練習内容を。
※以下長いですが、原文の練習メニューをすべて日本語に、かつタイムをペースに変換しました。
※ベルリンマラソン2017から42日前までの練習内容です。※ポイント練を赤文字で★を付けてます。
ー キプチョゲ選手のトレーニング内容 ー
●42日前 AM ★ロング走
30㎞ (3:24/km)
PM 10㎞ (4:00/km) ジョグ
●41日前 AM 16㎞ (4:22/km) ジョグ
PM 10㎞ (4:00/km) ジョグ
●40日前 AM ★ファルトレク走
10分(3:00/km)×4回
(間にスロージョグ 2:00)
(下り坂 2:45-50/km、登り坂 3:10-15/km)
PM 12㎞ (4:10/km) ジョグ
●39日前 AM 22㎞ (3:32/km)
PM 休息
●38日前 AM 21㎞ (3:30/km)
PM 10㎞ (4:00/km) ジョグ
●37日前 AM ★インターバル走
1200m(2:50/km)×1回
1000m(2:55/km)×5回
(間ジョグ 1:30)
300m(40秒)×3回
(間ジョグ 1:00)
200m(27秒)×2回
(間ジョグ 1:00)
PM 休息
●36日前 AM 18㎞ (3:56/km) ジョグ
PM 11㎞ (3:54/km) ジョグ
●35日前 AM ★ロング走 ※悪路での走行
40㎞ (3:39/km)
PM 休息
●34日前 AM 18㎞ (3:53/km)
PM 10㎞ (4:00/km) ジョグ
●33日前 AM ★ファルトレク走
※クロカンコース
1分(2:45/km)×30回
(間ジョグ 1:00)
PM 休息
●32日前 AM 20㎞ (3:51/km) ジョグ
PM 休息
●31日前 AM 21㎞ (3:22/km)
PM 11㎞ (3:53/km) ジョグ
●30日前 AM ★インターバル走
800m(2:10)×12回
(間ジョグ 1:30)
400m(62秒)×10回
(間ジョグ 1:30)
PM 休息
●29日前 AM ビルドアップジョグ
18㎞(6:00/㎞→3:30/㎞)
※後半5㎞を3:30/㎞
PM 10㎞ (4:06/km) ジョグ
●28日前 AM ★ロング走
※高低差あるコース
30㎞ (3:16/km)
※レースペースより18秒遅め
PM 休息
●27日前 AM ビルドアップジョグ
18㎞ (5:45/㎞→3:30/㎞)
※後半6㎞を3:30/㎞
PM 休息
●26日前 AM ★ファルトレク走
※高低差あるコース
3分レぺ+1分ジョグ
(セットで3:00/㎞)×18セット
PM 休息
●25日前 AM 22㎞ (3:46/km)
PM 休息
●24日前 AM 21㎞ (3:22/km)
PM 11㎞ジョグ(3:54/km)
●23日前 AM ★インターバル走
2000m(2:52/㎞)+
1000m(2:50/km)×5セット
(間100m歩く→100mジョグ)
PM 休息
●22日前 AM 18㎞ (4:00/km) ジョグ
PM 11㎞ (4:00/km) ジョグ
●21日前 AM ★ロング走
40㎞(3:19/km)
※レースペースより23秒遅め
PM 休息
●20日前 AM 18㎞ (4:06/km) ジョグ
PM 10㎞ (4:06/km) ジョグ
●19日前 AM ★ファルトレク走
※クロカンコース
1分(2:45/km)×25回
(間ジョグ 1:00)
PM 休息
●18日前 AM 20㎞ (3:51/km) ジョグ
PM 休息
●17日前 AM 21㎞ (3:22/km)
PM 11㎞ジョグ(4:05/km)
●16日前 AM ★インターバル走
1000m(2:53/km→2:45/km)
×13回 (間ジョグ 1:30)
PM 休息
●15日前 AM 18㎞ (4:10/km)
PM 10㎞ (4:00/km) ジョグ
●14日前 AM ★ロング走
30㎞(3:24/km)
※レースペースより26秒遅い
PM 休息
●13日前 AM 16㎞ (3:56/km) ジョグ
PM 11㎞ (3:38km)
●12日前 AM ★ファルトレク走
※クロカンコース
3分(2:55/km-3:00/km)
×13回(間ジョグ 1:00)
PM 休息
●11日前 AM 22㎞ (3:46/km)
●10日前 AM 21㎞ (3:22/km)
PM 10㎞ (4:00/km) ジョグ
●9日前 AM ★インターバル走
800m(2:10)×14回
(間ジョグ 1:30)
PM 休息
●8日前 AM 18㎞ (4:10/km)
PM 10㎞ (4:00/km) ジョグ
●7日前 AM ★ロング走
40㎞ (3:22/km)
PM 休息
●6日前 AM 18㎞ (4:06/km)
PM 10㎞ (4:06/km) ジョグ
●5日前 AM ★ファルトレク走
2分(2:50-55/km)×20回
(間ジョグ1分)
PM 休息
●4日前 AM 20㎞ (3:51/km) ジョグ
PM 休息
●3日前 AM 21㎞ (3:22/km)
PM 11㎞ (4:05/km) ジョグ
●2日前 AM ★インターバル走
400m(63秒)×12回
(間ジョグ 1:30)
PM 休息
●前日 AM 休息(ベルリンへ移動)
●レース当日 ベルリンマラソン2017
タイム 2:03:32
///
トップランナーの、ましてや世界記録保持者の
練習メニューを、こう、ざっと眺められることの幸せ。
だが見てるだけじゃ宝の持ち腐れ。
ということで、ダニエルズ式の計算を用いて
以下から練習内容を分析していきます。
※ダニエルズ式の計算は下記書籍を参照。
- 作者: ジャック・ダニエルズ,前河洋一,篠原美穂
- 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
- 発売日: 2016/03/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
///
まずはポイントから。
● 週に1度、必ずファルトレク走を行っている。
● 負荷が高いスピード練の間隔は3-4日に1度としている。
● ロング走(20-40㎞)はレースペースより20-30秒遅く設定している。
● 閾値(LT,AT)ペースでのミドル走(10-20km)は行っていない。
● 基本、午前と午後の2部練だが、ポイント練の日は午前のみが多い
● 月間走行距離は、700 - 800㎞ 程度
● 1週間の練習メニューと間隔がきっちり固定されている。
※↓のメニューを毎週繰り返す
月 ジョグ
火 インターバル走
水 ジョグ
木 ロング走
金 ジョグ
土 ファルトレク走
日 ジョグ
特筆すべきは、ファルトレク走を必ず週1回行っていること。
ちなみにファルトレク走とは、、
芝生や土でかつ起伏があるクロカンコース(舗装路も可)で、疾走とジョグを繰り返し、緩急つけて走るトレーニング法。
ペース設定や距離にルールなく、その日の体調やノリに合わせて、自由に感覚的に走ります。
疾走で心拍数を上げ、ジョグで筋肉を休めつつ心拍数を高いまま維持し、また疾走で心拍数を上げる繰り返しで、スピートと持久力をストレスフリーに高めるトレーニングです。
その日の体調や感覚で疾走すればいいので、
インターバル走のような精神的負荷が低いこと、怪我やオーバートレーニングのリスクが低く追い込めることが最大のメリット。
インターバル走が苦手な方や、初心者におすすめのトレーニングと言われてますが、このファルトレク走を積極的に取り入れて、世界記録を更新した事実を考えると、とても効果が高い練習である事がわかりますね。
余談ですが、アフリカ系ランナーが行うファルトレク走において、ショートインターバル的に1~2分程度の疾走を繰り返すメニューが多いようです。
///
次に、キプチョゲ選手の過去マラソンのタイムを用いて、ダニエルズ計算で割り出したトレーニング時の適正ペースを見てみましょう。
※↓のサイトで簡単に割り出すことができます。
● ダニエルズ計算へ入力するデータ
キプチョゲ選手のマラソンタイム
※2013~2016までのタイム平均
(リオオリンピック除外)
2:04:22(Ave 02:57/km)
● 割り出された練習メニュー別(レぺ除く)の適正ペース
ジョグ (Easyペース) 03:25-37/km
マラソン (レースペース) 02:55-59/km
テンポ走 (閾値ペース) 02:50/km
インターバル走 02:37 (1000m)
02:05 (800m)
01:03 (400m)
00:31 (200m)
以上が、ダニエルズ計算で割り出された適正ペースです。
その上で、キプチョゲ選手の実際の設定ペースを見ていきましょう。
● キプチョゲ選手の実際の練習時ペース
※()はダニエルズ計算の適正ペースから見てという意味
ジョグ (Easyペース) 03:50-04:05/km
(0:35-28秒遅い)
ロング走 (中間ペース) 03:16-39/km
(0:20-38秒遅い)
※レースペースから
ファルトレク走 02:45-50/km
※1-2分の疾走時
(0:13秒遅い)
※ITペースから
インターバル走 02:45-50 (1000m)
(0:08-13秒遅い)
02:10 (800m)
(0:05秒遅い)
01:02 (400m)
(適正ペースと同じ)
00:27 (200m)
(0:04秒速い!)
結果、ダニエルズ計算の適正ペースから見れば、遅めの設定ペースで練習している印象です。
遅いというか、どの練習においてもレースペース(2:57/km)から乖離しすぎないペースを設定しているようです。
インターバル走もダニエルズ式から見て、スピードより本数を多く設定(ダニエルズ式では5-6本、キプチョゲは10-12本)しており、スピードより持久力をターゲットにしてます。
入力したデータ自体が人間の限界近い(?)数値なので、割り出された適正ペースが速すぎるのか、キプチョゲ選手の設定ペースが遅いのか、
素人にはまったく判断できない。が、
客観的な参考の材料になるかと。
///
そしていよいよ、このキプチョゲ選手のデータを、サブ3向け練習メニューに適用した場合を見てみます。
まずは、ぎりぎりサブ3(笑)できる適正練習ペースをダニエルズ計算で見てみましょう。
● ダニエルズ計算へ入力するデータ
ぎりぎりサブ3のマラソンタイム
2:59:00(Ave 04:15/km)
● 割り出された練習メニュー別(レぺ除く)の適正ペース
ジョグ (Easyペース) 04:50-05:08/km
マラソン (レースペース) 04:10-15/km
テンポ走 (閾値ペース) 04:00/km
インターバル走 03:41 (1000m)
02:57 (800m)
01:29 (400m)
00:44 (200m)
と、サブ3するための練習における適正ペースが割り出されました。
この適正ペースは自身の経験と知り合いのサブ3ランナーから見ても速すぎるという訳ではなく、適正で信頼できる数値かと。
しかし、ちゃんとサブ3するには設定を適正から4-5秒速めに練習した方がいいと個人的には思います。体重重めの方は特に。
そして、キプチョゲ選手の練習ペースを
サブ3(2:59:00)で当てはめた場合、、
ジョグ (Easyペース) 05:25-05:36/km
ロング走 (中間ペース) 04:30-53/km
ファルトレク走 03:49-54/㎞
※1-2分の疾走時
インターバル走 03:49-54 (1000m)
※8-12本の場合
03:02 (800m)
01:29 (400m)
00:40 (200m)
なるほど。
こうみると遅すぎるという訳でなく、キプチョゲ選手のように、距離と本数を多く設定した場合、スタミナ重視の練習として、適切なペースなのかなと思いました。
インターバル走が設定3:50/kmでも、本数を5本から10本にした場合は、相応に負荷が高くなるし、ロング走もレースペースから20-30秒遅くても、一週間に行う回数を増やせば、かなりスタミナはつくでしょう。
///
まとめ。
今回公開されたキプチョゲ選手の練習内容は、ダニエルズ式練習法から見て、設定ペースは遅めだが、その分、本数を多く距離を長くする事で、スピードより持久力、スタミナを養うメニューを組んでいることが分かりました。
また、ファルトレク走を取り入れて、故障やオーバートレーニングに配慮しており、継続したパフォーマンスの維持、リスクマネージメントをしっかりしています。
キプチョゲ選手は身長170cmで体重57kg(wikiより)、BMIにして19.7。
軽い体重のうえ手足が長く、日本人から比べ走りの効率性(ランニングエコノミー)が高いことは考慮する所ですが、このキプチョゲ選手の練習メニューをまんま日本人に適用しても、人によりかなり記録が伸びるのではないかと思いました。
元々スピードある方、距離走をあまりされない方は、特に有効な練習メニューなのではと。
自分はスピードが無いので、逆に適正より速めに練習しないといけないですが。。^^;
以上、キプチョゲ選手の練習メニューは、サブ3の方、サブ3を目指す方、全ての市民ランナーにも、高い効果がある可能性を秘めた練習で
ある事が分かりました。
みなさんの練習に少しでも参考になれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
↓ ランキングに参加しておりますので、
↓ ポチッと応援のほど、どうぞよろしくお願いします!
↓
↓